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「んーっ、きれいな青空!今日も暑くなりそうだなぁ。」
少女が中庭で青空を見上げながら、大きく伸びをした。そして敷地内のある場所を目指して歩き出す。
向かった先は──
「失礼します。」
戸を開け、一礼してから中に入る。
そこは道場だった。
五十路過ぎの男と、二十歳くらいの青年が、向かい合って板の間に端座している。
「来たか、柚音。」
柚音(ゆずね)と呼ばれた少女は、青年の隣に座る。
「お待たせしてしまったようで申し訳ありません、師範。」
「柚音、遅れるなといつも言っているだろう。」
師範と呼ばれた男が答えるより早く、青年が口を開いた。
「すみません、三日ぶりの青空で、たまった洗濯物と格闘していたものですから。」
「しかしだな……」
「多津彦、もうよいだろう。始めるぞ。」
「……はい。」
師範の言葉に、多津彦(たつひこ)と呼ばれて青年は言いたいことを飲み込んだ。
そして多津彦は壁に掛けてあった竹刀を手に取り、道場の中央に立った。
柚音も壁に近づくと、竹刀を手に取る。
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