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柚音は玄関に向かうと、外に出た。
──どうして女は、男の人と同じことをしちゃいけないの?
どうして女ってだけで、 好きなことを諦めなきゃいけないのっ!?
人の行き交う大通りを、怒気を撒き散らしながら、大股でずんずんと歩く。
その様子にびっくりした町人が、思わず道をあける。
──どうして私の性別ばっかり見て、私自身を見てくれないのよっ!
柚音はさらに歩調を速め、町からどんどん離れて行く。
松林の中に伸びる一本道へと入っていくと、波の音が聞こえてきた。
次第に視界が開けて行き、砂浜に出ると、柚音は膝を抱えて座り込んだ。
柚音は落ち込んだ時や、一人になりたい時には、よくこの浜に来ていた。
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