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『あぁカレン、どうか………どうか無事で…………』
カレンと呼ばれた少女はそのかわいらしい顔を笑みに変えて
『行ってきます』
と鈴が鳴るような声で別れを告げた。
少女は―――カレンはその長い黒髪を揺らめかせながら一歩、また一歩と化け物が住んでいるという場所へ向かったのだった。
『ちょうどこの辺りだったのかな………私が倒れていた場所は』
カレンは立ち止まって辺りを見回す。
何の変哲もない森。
(どうして私はここにいたんだろう?)
その時のカレンは身体中がボロボロでまるで追われていたようだと村長が語ってくれた。
カレンは首を傾げながらふと前方に目をやる。
『あっ………』
そこには鬱蒼と生い茂る森には似合わない豪華な城が少し遠くに建っていたのだった。
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