壱 鬼塚ギンコ

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なんということでしょう。 私が何をしたというのでしょうか。人の顔を正面から見たと思えば、鬼呼ばわりして逃げて行くなんて。 どうして私が朝からこんな仕打ちを受けなければならないのでしょう。 それはそうと、子供に鬼呼ばわりされた挙句に全速力で逃げられた可哀相な女子高生である私は、鞄から手鏡を取り出して自分の顔をまじまじと眺めました。 どう見ても鬼のようには見えません。これでも一応、少しでも表情が柔らかく見えるように薄めの化粧で頑張っているし、毎日鏡の前に立って笑顔の練習もしているというのに。 私はどこからどう見てもそこら辺にいる女子高生だというのに。EXILEのメンバーで一番好きなのはMAKIDAIかな、なんて話で友達と盛り上がっていそうな女子高生なのに。 まあ、実際の私はEXILEファンでもないですから(何を隠そう私はWANDSのファンです)、仕方ないのかもしれません。 いえ、そういう問題ではありませんね。気を取り直して再び読書タイムと洒落こみます。 こんなこと、よくあってたまるかという感じなのですが、私にとってはもはや日常茶飯事です。自分でも可哀相なくらいに。
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