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とにかく、奴を逃がすわけにはいきません。
幸い、私は幼い頃にこの町に越してきて以来はずっとこの片田舎の町で育ってきたので、このシンプルな町並みはほぼ把握しています。
軽い抜け道なんかも、知ってたりして。
だからあの男を見失わない限りは、私にとってはこの町は有利なフィールド。まあ、逆に相手がこの町の構造を知り尽くしているというのならば、話は別ですが。
この際ですから、私が住むこの町を紹介しましょう。とはいえこの私、今は取り込み中ですので、本当についでのやっつけ仕事になりますが、構いませんね。特にこの町を知りたいわけでもないでしょう。
さて、私がメロスの如く走るこの町、名を桜羽町というのですが、何でもその昔、まだお侍さん達が存在したくらいの昔、ここは王倭という名の地だったそうです。
王はそのままの意味で、王様の王。倭というのは、日本のことですね。
立派な名前だとは思いませんか。王倭。その威厳ある名が示す通り、かつてここは日本の中心だったという話です。
だけど、時代というのは変わるもので、やがて王倭は寂れていき、やがて桜羽と名を変え、今に至るわけです。
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