平成妖怪百鬼夜行

壱 鬼塚ギンコ

この桜羽町、かつて日本の中心だったという話、私は信じていません。

確かに、町に存在する大きな神社――妃塚神社という名です――には、かつて名を馳せたお侍さん達や王族達の名が彫られた立派な記念碑が設けられたりしてはいますが、だからといって、それでは信憑性に欠けます。

だってこの桜羽町、かつての中心地だった名残が皆無に等しいのですから。

お洒落な服屋も無ければ、ゲームセンターも、バクドナルドハンバーガーすら無いのですから。ああ、コンビニの種類は割と充実していますよ。

そう、つまりは私のような普通の女子高生が楽しめる要素が全くといっていいほどありません。

買い物がしたくなったり、街で遊びたくなった時には、四十分毎でしか来ない電車に乗って、二十分ほど時間を費やして、繁華街へと出るしかありません。

そうですね、はっきり言って不便です。

高校を卒業して、貯金が満足のいく額まで達したら、私はすぐさまこの町を出ていくつもりです。

桜羽町、日本の片田舎の町。

申し訳程度に良いところも挙げておきましょうか。

そうですね、桜羽町限定の飲料水、『納豆サイダー』、なんて。

駄目ですね。