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○●○
「あ……。今日も、来てくれたんだね、しーちゃん……」
「いい加減その呼び方やめろよ。いつまでもガキ扱いすんじゃねぇ」
「うん……。ごめんね、しーちゃん」
「テメェ、わざとか!」
「でも……流行ってるん、でしょ? 何だっけ……ほら、ギャップ萌え……?」
「オレのどこに萌えな要素があるんだよっ」
うふふ、と、彼女――――初陽華 (はつひ・はな)は、ベッドの上で儚げに、しかし楽しそうに微笑んだ。
真っ黒で量の多い長髪は、長い入院生活で痛んでしまっているが、それでも癖のないストレートは、心炎にとっては大きな魅力の1つだ。
可愛さの先行するその瞳は、繊細な気配を放っており、儚く、脆く、崩れてしまいそうだ。
さながら、深窓の令嬢といった美しい姿を纏う華に、心炎は改めて息を飲んだ。
「お前、今日は一段と『白く』ねぇか?」
白い。
もちろん、それは色のことではなく、彼女の雰囲気のことだ。
『儚い』という言葉を表現したいのだろうが、彼にそんなボキャブラリーがあるはずもない。
だが、長年の付き合いである華は、その言葉を正しく受けとった。
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