第1章

7/18
前へ
/63ページ
次へ
○●○ 「あ……。今日も、来てくれたんだね、しーちゃん……」 「いい加減その呼び方やめろよ。いつまでもガキ扱いすんじゃねぇ」 「うん……。ごめんね、しーちゃん」 「テメェ、わざとか!」 「でも……流行ってるん、でしょ? 何だっけ……ほら、ギャップ萌え……?」 「オレのどこに萌えな要素があるんだよっ」 うふふ、と、彼女――――初陽華 (はつひ・はな)は、ベッドの上で儚げに、しかし楽しそうに微笑んだ。 真っ黒で量の多い長髪は、長い入院生活で痛んでしまっているが、それでも癖のないストレートは、心炎にとっては大きな魅力の1つだ。 可愛さの先行するその瞳は、繊細な気配を放っており、儚く、脆く、崩れてしまいそうだ。 さながら、深窓の令嬢といった美しい姿を纏う華に、心炎は改めて息を飲んだ。 「お前、今日は一段と『白く』ねぇか?」 白い。 もちろん、それは色のことではなく、彼女の雰囲気のことだ。 『儚い』という言葉を表現したいのだろうが、彼にそんなボキャブラリーがあるはずもない。 だが、長年の付き合いである華は、その言葉を正しく受けとった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加