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第1章
○●○
「おい心炎!! ちゃっちゃと台片付けろ! 試験すっぞ試験!!」
「――……あぁ?」
階下から響いてきた野太く楽しそうな声に、大丸心炎 (だいまる・しえん) は機嫌の悪そうにベッドから体を起こした。
枕元の時計を見ると、時間は朝8時。今日は日曜で休みだから、と寝坊したのだが……
「何だよ、試験て……」
くぁあ……、と大きくあくびをして、伸びをする。休みくらいゆっくり寝かせてくれ……。
文句を垂れつつも、彼は律儀に階下へと降りてゆく。
下からは作業の音が絶え間無く響いており、これは明らかに仕事の気配だ。
“何だぁ……? 仕込みか……?”
廊下を歩き音のする方へ向かうと、たどり着いたのは広い土間となっている玄関だった。
「おぅ、遅ぇぞ心炎!」
「おはよ、心炎」
「おはようございます、心炎さん!」
そこには職人仲間数人と、
「お、休みだってのに素直に降りて来やがったな」
父親の大丸焔 (だいまる・ほむら) の姿があった。
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