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日に焼けて黒くなった肌に刻まれたシワや、白くなりかかっている髭が『老練』という言葉を連想させる、いかにも職人気質な風貌の父親。
そんな彼の姿を見るなり、心炎は面倒そうに口を開いた。
「何だよ、親父……。休みくらい寝かせろよ」
「まぁ、そう言うな。新しい打ち上げ機械の試験すっぞ」
よく見てみると、作業に参加している仲間たちは、職場でも腕利きとして重宝されている人間ばかりだ。心炎もまた、彼等の技術を盗んでいる最中である。
“いや……チャンスか”
その瞬間、心炎が父親を見つめる瞳に、光が宿った。
「すぐに準備してきます」
先ほどまでの生意気な調子は一瞬で消え、心炎は廊下を戻っていく。
「おやっさん、心炎のアレ、いつ見ても凄いねぇ」
焔と年の誓い職人が、焔に話し掛けると、彼は「ヘッ」と楽しそうに笑った。
「やっと楽しくなって来たんじゃねぇか? 悪ィが、いっちょ頼むわ」
「毎度のことよ、気にすんねぃ」
「おぅ、頼んだぜ。っしゃあ! 大丸屋ァ、始めんぞ!!」
『応ォッ!!』
焔の掛け声に、職人たちが楽しそうに叫ぶ。
もちろん、廊下の奥から一際大きな声が上がったのは言うまでもない。
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