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「――……ちっ」
最期を看取ったというだけではなく、『大丸屋』という名前までをも心炎に遺して。
煙火は安心して旅立っていった。
「とんでもねぇ重荷、背負わせやがって」
皮肉るように言ってやると、仏壇の祖父が笑ったように見えた。
『相変わらず生意気ですねぇ』
そんな声が聞こえた気がして、心炎は笑いながら立ち上がった。
「うるせェよ」
廊下に出ると、洗面所へ寄って作業服の上着を洗濯機へ叩き込む。
Tシャツ一枚になった心炎は、そのまま玄関から外に出た。
季節は夏。
今年は、激暑といって間違いないほどの灼熱が降り注いでいて、今日もまた、太陽は元気だ。
風はあるが、吹き付けるのは熱風。涼しさなどかけらもない。
「――……汗くさくなっちまうじゃねーか」
やる瀬ない気持ちで歩き出すと、門の所で母親の臥煙 (がえん) と出くわした。
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