第1章

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「あら、心炎。今日も?」 「おぅ。お袋は?」 「アタシはこれからお役所よ。隅田川でやらかしたでしょ? その後始末」 「――……親父は」 「さぁ? 休みくらい寝かせろ、じゃないの?」 「おいおい、親父に行かせろよ……。建設途中の東京スカイツリーに花火仕掛けて打ち上げるなんざ……普通に犯罪だぜ」 「まぁまぁ。警察サンにもお役所サンにも、アタシなら顔が利くしね」 「――……息子にそんな黒いこと言って良いのかよ」 「アタシは自分でやって来たことを隠すつもりはないわ」 「チッ、極道生まれめ」 心底嫌そうに言う心炎に、臥煙は豪快に笑いながらすれ違った。 「あっはっは! 華ちゃんによろしく!」 「華を極道に引き入れる気はねぇよ」 背後からまた豪快な笑い声が聞こえるのを無視して、心炎は目的地に向かって歩き始めた。 「……」 道すがら、母親のことを考える。 母親には、左手の小指が半分ない。 『あの人と一緒になるためよ。指くらいいくらでもくれてやるわ』 臥煙は極道の生まれだ。それも組長の第一継承権を持つ、次期組長だったのである。 「ギャグマンガかっつーの……」 もちろん、臥煙の言っていることが嘘である可能性は否めないし、荒唐無稽な話を信じるよりは、嘘だと思っておいた方が気は楽である。
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