ハツコイ

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そんな私に、意外なところから奇跡がやってきた。 その日の私は、掃除当番。 最後に担任に終了の報告をするのが、じゃんけんで負けて班長になった私の役目。 職員室の扉に手をかけたところで、廊下の向こうに先生を見つけた。 「澤田先生」 普通に声を出してしまってから、先生が誰かと一緒なのに気づく。 ブレザーの高校には場違いな、学ラン姿。幼いのに意志の強そうな顔。 ……キミだった。 「おう、片桐か。掃除終わったのか」 「は、はい」 上の空でなんとか答えた。 「……ん? 片桐。お前、絵が得意だよな」 「え? は、はい?」 「広瀬。彼女に頼むといい」 最後の台詞は、生徒会長に向けて。 きょとんとしている私を置いて、澤田先生は名残なく職員室へ消えていった。 残されたのは、私と……キミ。「……足、すぐ治った?」 静かなキミの声。 ……私のこと、覚えてたの? ドキドキする。 「あの……合同文化祭のポスターなんだけど。あ、なんですけど」 慌てて敬語に直すのがおかしくて、私はつい吹き出した。 それを見て、広瀬くんも笑う。 「どっちの美術部も展示で忙しいって断られちゃって」 澤田先生は美術部の顧問だ。 「あの……片桐さん、描いてもらえないかな?」 ねえ。 私の返事なんか、もう絶対にひとつしかなかったよ。
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