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こんな偶然ってあるんだ―。
「…くすっ」
「え?」
今、私…笑われた…?
「あ、すみません。…すごい汗なんで」
「あ!こ、これは…そのっ、い、今走ってきた、から…」
……カ、カス本ぉ~~~~っっ!!!
「…はい、どうぞ」
目の前に差し出された綺麗にアイロンのかかったハンカチ。
「えっと?」
「使って、…ください」
「あ、…ありがとう」
受け取ったハンカチで汗を拭きながら私の顔がどんどん熱くなるのが分かる。
「あ…、ちょっとゴメン」
不意に伸ばした彼の手が私の髪に触れてきた。
「…っ!!」
「あ…、っと、すみません、髪も乱れてたから」
少し頬を染めてフワリと笑うキミの顔に私の心臓は今にも飛び出そうだった。
「あ…、あの!ご、ごめんっ!!これ、洗って返すねっ!!」
「え?いいですよ…あげます」
「だ、ダメだよっ!じゃあ、買ってくる!」
「くすっ…いいですって」
「で、でも~…」
広瀬くんは少し困ったように黙り込む。
私、鬱陶しかったかな…。
「……、片桐さん」
「は、はいっ」
「…動物、好き?」
「…ど、動物?…う、うん、好きだけど」
「…じゃあ、今度の日曜日動物園に付き合って?それで今のお返しってことで。…じゃあ、僕こっちなんで」
広瀬くんは手を振って歩き出してしまった。
………。
手の中にある広瀬くんのハンカチを見つめる。
え?…今、何て言ったの…?
広瀬くんと……動物園?
ええええーーーーーっっ!!??
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