はじまり

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─キュッキュッ ジャー ── 蛇口をひねると 冷たい水が勢い良く流れる ドンッΣ 顔を洗う最中に 背中に衝撃がはしった。 「おっつかれー!!! 今日も頑張ってますねぇ!」 あからさまに テンションの高い声。 この声で背中をたたいた 正体がわかると ふいに口元が緩んだ。 「なんだ,吉村かよ 声かけるんなら 普通に話かけてくれる?」 迷惑そうに言ってから 再び水に顔を沈める 「アハハ, わざわざタオル 持ってきてあげたんだから 少しは感謝してよね。 それに! 雪菜って呼んでって いつも言ってるでしょ」 そう言って 頬を膨らませた雪菜を 横目で見てタオルをうけとる。 「はい,はい,雪菜さん ありがとうございました」 「いえいえ, 素直でよろしい!」 この偉そうな奴は 吉村雪菜。 小中学校が同じで 何故か高校まで同じ。 おせっかいきわまりないが 良いやつだとは思う。 こうしてよく部活の時に ひょっこり現れるのだが 自分の部活はどうしてるんだか。 これで副会長っていうから 笑ってしまう。 「んじゃ, そろそろ練習に戻るんで」 タオルを返して グラウンドに向き直す。 「了解! 頑張ってね~!」 手をふる雪菜に 背中で返事をして 俺は練習に戻った。 .
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