【プロローグ】

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      「ふ~っ! 疲れたっ!」  アニスは邸の自室に入ると、持っていた仕事用のスポーツバックをソファーに放り投げ、自分自身の身体もベッドに放り込むように倒れ込んだ。 「お帰りなさいませ、アニス様。今すぐお茶をお淹れしますか?」  アニス専属メイドのモーリーは本当に気が利く。  これから帰宅する旨の連絡を入れておいたら、しっかりバスタブにお湯をはっておいてくれた。 「あ、お茶は後でいいわ。せっかくモーリーが用意してくれたお風呂が冷めちゃうから……先にゆっくりバスタイムにするわ」 「かしこまりました、では準備だけしておきますね」  アニスとそう年の変わらないモーリーだが、その物腰はまるっきりベテランメイドのそれだった。  バスルームからはアニスの大好きな薔薇の香りが漂って来ていた。 「さすがにモーリー、ローズのバブルバスかしら?」 「はい、左様でございます、アニス様はかなりお疲れだと思いましたので……」  彼女は茶器を用意する手を休めずに、にこやかにそう応えた。 「バブルバスね! じゃあ泡が消えないうちに早く入って来なきゃ!」  アニスはフカフカのベッドから起き上がると、ルームウェアを持ってバスルームに向かった。 「ありがとう、モーリー。準備してくれたら下がっててくれていいわ。夕飯の前に一休みしたいから……」 「かしこまりました、ではお召し上がりになる時にお呼び下さい」 「うん、わかった」  アニスは短く返事をすると、バスルームに姿を消した。          
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