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彼女のもう一つの仕事。
それは社会的には決して許される内容ではなかった。
『セクシーローズ』
これが彼女のもう一つの名前。
裏社会で生きる者、やましい事をして稼いでいる金持ち達の間でこの名前を知らない者はそういないだろう。
そう、彼女のもう一つの顔は『怪盗』なのだ。
その腕前は華麗にして鮮やか。
狙った獲物は必ず手に入れる。
しかし、今まで彼女に傷つけられたと言う人物は一人もいない。
しかも、彼女のターゲットの殆どが盗品や、詐欺まがいの方法によって持ち主が入手した物ばかりなので、警察にも届ける事が出来ない。
彼女は育てて貰った施設の経営者に依頼されて、裏社会に足を踏み入れた。
……その施設の経営者が『伝説の怪盗』と呼ばれている『怪盗G』と言う人物だと知ったのは、彼女とその仲間たちが施設運営の後継者として怪盗稼業を継いでくれないか、と言われたその日だった。
施設の運営費は、怪盗としての仕事で得た報酬でまかなわれていたのだった。
いつも幼い自分達と一緒にいてくれるけど、たまに留守にしていたのはその為だったのか……とアニスは納得した。
その頃既に資産家の令嬢として暮らしていたアニスも、裏社会の要注意人物のリストは見た事があった。
その中に、確かに怪盗Gの名前は記載されていた。
『誰一人傷つける事はないが、狙われたらそのお宝は誰にも守れない。だが彼が狙う品は表立って公表する事の出来ない物に限られている』
当時の資料にはそう書いてあった。
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