序章

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雨が降りしきる墓地。 そこに花を持って現れた一人の女性がいる。 ジャリッ…ジャリッ… その女性は、ある墓の前で立ち止まった。 その墓には、゙大神陸軍大尉殿゙と刻まれている。 だが備えられている花は枯れており、墓の周りの雑草が目立っている。 女性は雨を厭わずに傘を置いてしゃがみこみ、その雑草を抜いていく。 「お主は…智美殿か?」 智美という女性が振り向いた先には、侍の姿をした男が立っていた。 「…あら鋼さん、廃刀令を知らないの? そんなんじゃ、いつまでも軍に睨まれるわよ?」 「存じておる。 やはり智美殿も来ておられたか。 今日はあいつの命日だからな…」 鋼と呼ばれた男は供え物を墓に置くと、手を合わせた。 「もう、何年になるだろうか?」 「三年になるかしらね。 時代は…変わったわよ、大神大尉。」
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