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「有田伍長、その人は私の古い友人だ。
下がっていなさい。」
「はっ…」
有田伍長が引き下がる。
「お久しぶりです、智美さん。
二年ぶりですね…」
「そうね、元気そうで何よりだわ。
少し時間ある?」
「智美さん、積もる話もありますが、今日は軍部に帰還報告に行かなければなりません。
もし明日、お時間があるのならカフェーで会いませんか?」
「もちろん、いいわよ。」
「では、昼の二時に。」
「分かったわ。」
大神大尉と智美は会う約束をして、別れた。
駅の玄関の外で有田伍長は待っていた。
「待たせてすまないね、有田伍長。」
「いえいえ、先ほどはとんだ失態を…申し訳ありません。
あの、先ほどの女性は?」
「いやいや、気にしていないよ。
智美さんか…」
大神大尉は智美の事を有田伍長に話した。
昔、大尉が軍の任務でフランスに行った際、会談中にフランスの使節が大日本帝国を侮辱するような発言をしたのに大尉は激昂し、その使節に斬りつけた。
それを庇ったのが智美であったのがきっかけで知り合った。
後に再会したが、大尉が北海道での任務に就いてからは手紙のやり取りもなかった。
そんな話をしているうちに、二人は陸軍総司令部に着いた。
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