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不思議だ。
いつも何気なく見ていただけだったのに、どうして今はこんなにも記憶や感情が溢れ出てくるんだろう。
まるでこうして思い出すことが決められていたかのように、鮮明に。
何だか、怖い……。
鼓動や顔の熱だけでなく、色々なものがコントロールできなくなりそうな気がして、戸惑いを通り越して恐怖を覚えた。
「あの、私帰ります。鍵は置いておきますので……っ」
先生の返事も聞かずに急いでエプロンを脱ぎ、手に取ったカバンに押し込んで逃げるようにその場から動きだそうとしたのだけれど。
「小林さん」
一歩を踏み出す前にカバンを持った腕を捕まれてしまった。
「あのっ、本当に帰らないと……」
下校時間はとうに過ぎている。
オレンジの深まった校舎にいる生徒はきっと私だけだ。
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