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それから二人は……。
冗談話に、けらけら笑い続けながら、ゆるゆると時間を過ごす。
けれど、月の光が窓から白く届き始める頃には、お互い疲れて無口になった。
弱ったな、と男は思った。
月の光に照らされて、うつ向き加減の彼女は、とても綺麗だった。
「愛してるよ。」
肩を抱き寄せて男が言うと、彼女は、ふふっと笑って、小説の中の男みたいだ――と言った。
それから、まだ何か言おうとする彼女を唇で遮る。
(今日は、何も言えずにいてよかった……。)
そう思いながら、彼女を抱いた。
抱きながらシャツの下の彼女の肌は、こんなにも白かったろうか――などと思ったりした。
朝。
目が覚めると、彼女の姿はなかった。
どうやら眠っている間に、出ていったらしい。
「まいったな。」
男はひとり、呟いた。
そして、彼女はもう、二度とここへは来ないだろうと、ぼんやり思った。
部屋いっぱいに朝の光が射し込んで、絨毯の片隅では何かが、小さいけれど、ひどく眩しく光っていた。
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