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深夜の夜景を足下に眺めながらひたすら望遠レンズをのぞく。
そろそろ手下から無線連絡が入る頃だ。
「しっかし、メイのワンちゃん達はけなげだよなー。」
望遠レンズを覗きながら、ヒロが歌うように呟いている。
「ウフフ、何?ヒロも投げキッス欲しいの?」
「バッ……、いらねーよっ!!」
「照れなくていいのに。コウは?」
「ノーサンキュー……。」
「全く……、アナタ達だけよ。アタシの色仕掛けが通用しないのは。」
ヘリはどんどん高度を上げ、そろそろアタシ達も真剣さを取り戻す。自動でピントをあわせてくれる望遠レンズに関心しながらひたすら覗く。
――――ガガッ……こちら、地上班C地点。強盗団のトラック、定刻通過!!……。
「来たか!!」
空気がビッと張りつめる。
アタシとヒロはレンズを持ち直し、ATM強奪犯のトラックを素早く探す。
「あっ!!」
ヒロが短く声を上げる。
「いたか!?どっちだ!?」
「いや、いた……って言うか、右って言うか、なんて言うか……その……。」
「右?」
なぜか歯切れが悪いヒロにコウがイライラしながら聞き返す。
「おかしいわよ?右じゃC地点を通らないわ。」
アタシは疑問を感じながらもつられて右にレンズを向けてしまう。
「いや、待って……。もうちょっと右でー……。」
「ヒロっ!!降下準備、していいのかっ!?」
「あっ!!違う違う違う!!右じゃなくて!!えーと……。」
「ちょっと、しっかりしてよヒロ!!」
一端目標から視線をずらしてしまったアタシ達は、その晩まんまとトラックを見失い、結局ミッションは失敗に終わった。
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