―灰色の空―

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………ふと我に返った。 なんで私、タツハと二人で夕日見てるんだろう…。 さっさと帰ろう、うん。 「要ちゃんさ、空…好きだよね?」 「…へ?」 唐突に言われ、帰るタイミングを失う。 …やっぱり調子が狂うな、コイツ…。 「なんか昔から気がつけば空を眺めてるような…?」 「………そうか………?」 「うん」 自分では気づいてなかったけど、言われてみたら………そうかも。 「………多分……母さんを見てて……癖になってるのかな?」 「楓さん?」 『楓』(かえで)ってのは私の母さん。 タツハは母さんの事も親父の事も名前で呼ぶ。 「母さんのイメージが『太陽』でさ、小さい頃太陽に母さんを探してたんだと思う。多分…それが癖になってるんだ」 「…そっか…。拓もそんな事言ってたな~『太陽みたいに明るい人』って」 拓と同じように感じていたって…微妙…。 「でも太陽って直視しちゃダメでしょ?」 「うん、だから『太陽の光』が母さん」 「あぁ、『明るくてあったかい』?」 「そう」 実際タツハは母さんに会った事はない。 その前に母さんが死んじゃったから。 それでも写真を見て顔も知ってるし、私たちから話も聞いてるからタツハの中で『楓さん像』ができているんだろう。 まるで知っているような感覚でこうして話してしまう。 「じゃあ、真さんは『青空』みたいだね」 ………!? 「いつも冷静でさっぱり爽やかで、空みたいに心広いし………俺…変な事言った?」 思わず凝視してしまったらしい私に、タツハが心配そうに尋ねてきた。 「いや、同じ事感じてたから…びっくりした」 「本当?」 「うん…」 タツハとも同じ思考回路かよ…。 「狂さんは?」 「親父は『夜空の黒』かな」 「あ、わかるかも」 ゆるぎない自分を持ってて星みたいに優しい所あるよね、なんて…本当よく見てるな、コイツ。 「で、拓は『夕日のオレンジ』」 「性格楓さんに一番似てるの拓だっけ?だからちょっとイメージも似てるのかな」 「ん~、そうかも」 そこまでは深く考えていなかった。 「あ、でも夕日が綺麗って思うのと拓は全く関係ないからな」 「うん、全く別物だね」 そこはちゃんと否定しとかなきゃな。 てか、なんで私こんな話してんだろう…。 誰にも話した事ないのに…やっぱり調子狂う、天敵め。 .
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