8人が本棚に入れています
本棚に追加
―ブブッブブッ…ブブッブブッ
珍しく私の携帯の着信が鳴る。
相手は真兄だった。
綺麗な夕焼けはもうほとんど沈んでうす暗くなってきている。
「もしもし真兄?」
『要か?大丈夫か?またからまれてるとか…』
「いや、タツハに会って話してたらこんな時間になった」
『そっか。それならいいんだ』
いつもより(からまれてるとしても)帰宅が遅い私を心配してくれたみたいだ。
タツハがちょっと貸してと、手をだしてきたので素直に差し出す。
「あ、真さん?タツハです。すいません、ちゃんと家まで送りますんで…」
別に送らんでもいい。
なんか話が盛り上がってきてるから放っておくことにする。
沈んでいく太陽を見ながら、さっきタツハに言われたことを考えた。
確かに空や色は好きだし…写真や絵も好きだし…すぐ帰っても暇だし…ちょっと考えてみようかなぁ…。
タツハに言われて…ってのがちょっと癪だけど…まぁいいか。
「はい、ありがとう要ちゃん」
「ん」
一通り話し終わったタツハから携帯を受け取りポケットにしまった。
「じゃぁ帰ろうか、要ちゃん」
「…ん」
やっぱり送られるのね、私…。
「今日ご飯ご馳走してくれるって言うからお邪魔するね」
「………そう」
嬉しそうに横を歩くタツハを見ながら、やっぱり苦手だと思う反面、なにかしら影響を受けているのも事実で…。
本当、つかめない奴。
「何?」
「やっぱり『雲』だ、お前は」
「へ?何ソレ?」
私は『灰色』だ。
だけど、今までより少し明るい。
私は『灰色』でありたい。
.
最初のコメントを投稿しよう!