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ぶっす~~~………
そんな表現が多分一番合っているだろう、肩肘ついて座っている俺は今機嫌が悪い。
朝の喧騒中にソレに気づいている奴は少ないが、そんな俺に話し掛ける奴は一人もいない。
言っておくが俺は自分で言うのもなんだが、クラスで、いや、学校の人気者だ。
なにかと目立ってしまう俺は、おそらく校内では知らない者はいないというほどの男だ。
自意識過剰とか、校内きっての不良とかそんなんじゃない。
明るくて気さくで、まぁ格好良くて?そんなカンジの人気者。
それが俺、矢沢拓なのだ。
つまり、そんな俺に話し掛けられないほど今の俺は機嫌が悪い。
原因の一つは左頬の絆創膏…。
「どしたの、ソレ?」
機嫌の悪い俺に普通に話し掛けられる唯一の人物、片瀬竜羽が『ソレ』を指差して尋ねた。
「…撃たれた」
普通なら驚愕の台詞だが、竜羽はサラっと『犯人』の名前を言った。
「…狂さん?」
「…おう」
『狂』ってのは俺の親父。
竜羽は何故か俺達家族の事を名前で呼ぶ。
「今度は何したの?」
まったく…と言いながら俺の前の席に座る。
『今度は』って言葉の通り、実は『撃たれる』のは初めてじゃない。
もちろん、刑事である親父だけどさすがに本物の銃ではない。
ちょ~っと改造してちょ~っと威力のある空気銃だ。
そう、俺の頬をかすめ血を流させる程度には…。
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