―夕暮れの夜明け―

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連れて来られた部屋は10畳くらいの広さで、ボロボロのソファとテーブルしかなく、余計に広く感じた。 そこには更に3人の男が待っていた。 俺を含めて9人の男が入ると…さすがに窮屈なカンジがするな…。 しかし…店の奥の部屋を自由に出入りできるってことは、店ぐるみで麻薬売ってるのか? ったく、ロクでもねぇな…。 「で、何?ご馳走でもしてくれるの?ま、ロクなもんなさそうだけど…」 正直、俺をココに連れて来た真意がわからない。 だけど不安がったりしたら舐められるから、絶対そんな素振りは見せてはいけない。 ま、本当に余裕なんだけど。 「なんだ?このふざけた奴は?」 3人の内の1人が少し苛つきながらがたいのいい男に言った。 短めの金髪で、幾つもピアスがついていて、目が鋭く、細身ながらちゃんと筋肉があるのがわかる。 おそらくコイツがこの集団のリーダーなんだろう。 「すいません郷田さん。コイツが前に言ってた矢沢です」 「……へぇ…コイツが…」 途端に興味深く俺を見る。 てか、俺を『コイツ』呼ばわりしまくるとはいい度胸じゃねぇか。 「何?俺そんなに有名なの?サインならやんねぇぞ」 「噂通り面白い奴だな。気に入ったよ」 郷田は不敵に笑いながら肩に手を回してきた。 だからなんでそんな馴れ馴れしいんだよ、てめぇら。 「お褒めに預かり光栄だね」 その手を軽くかわしながら心にもないことを言う。 「なぁ、突然だけど仲間にならねぇか?すごく強いらしいじゃねぇか。河田達が何度もお世話になったって言ってたぜ。」 そう言ってがたいのいい男、河田を見る。 …て事は初対面じゃなかったのか。 「へぇ…ハジメマシテじゃないのか。あまりに弱くて覚えてないわ」 「…ってめぇっ!」 怒りで顔を赤くして抗議するが、本当のことだから仕方がない。 仮に間違えて要を襲っていたとしても、やられているんだから弱いことに変わりはない。 そうか、コイツ等…俺を仲間にしたかったからココに連れてきたのか。 無駄なことを…。 .
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