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「要ちゃん」
不意に呼ばれ、声の方を見ると見知った顔。
「タツハ…」
片瀬 竜羽(かたせ たつは)、天然茶髪でいつも笑っている、何を考えているのか分からない胡散臭い奴。
拓と小学生からの付き合いで、つまり私とも小学生からの幼馴染みというやつだ。
「要ちゃんの制服姿久しぶり」
制服=スカート姿。
私服でスカートなんて持ってないから、唯一のスカートだ。
似合わないのは分かってるから本当に嫌だ。
ちなみに小・中は同じ学校だったけど、高校は違うので『久しぶり』ってわけ。
高校まで拓と同じ学校に行く気は全くない。
拓とタツハは同じ高校だ。
「こんなの見たって仕方ないだろ…」
内心、嫌な奴に嫌な姿を見られたと思い舌打ちする。
何が嫌かって…。
「そんな事ないよ。要ちゃんかわいいし、スタイルいいし、足長いし、何より足綺麗だし…」
「もういい!」
聞いてられなくなり、軽く膝蹴りをくらわす。
そう、こいつは恥ずかしげもなくこういう事を平然と言う。
昔からこういう奴で、調子が狂うから正直苦手。
悪い奴じゃないし、一緒にいて楽しい時もあるけど…でも…やっぱり苦手なんだ。
いわば『天敵』だな。
「ところで何してたの?珍しくぼ~っとしてたみたいだけど…」
「あぁ…アレ…」
尋ねられてさっきまで見てたモノを指す。
『珍しく』私が(ぼ~っとはしてないけど)見とれたモノ…。
「………綺麗だね」
優しく鮮やかな紅と橙が白や青を包み込むように染めて…沈みかけているけれど、それでも綺麗な夕日…。
車通りの少ない、小さな川に架かっている小さなこの橋から見る夕日が、私はとても好きだった。
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