始の巻【とある旅館の怪】

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「おおっ、郡也それマジかよ!」 「ああ、本当だよ……煩いからそんながなり立てるな」 ここは宮城県某市のとある高校の部室、そこに集まった30人のバレー部員が部長である『斎藤郡也』の一言で沸き立っていた。 「だって嬉しいんだもん、予算の少ない俺らの部が遠征なんて珍しいじゃん!」 「そうそう、辰巳の言うとおりだ。ワクワクするなぁ~」 「いや、でもホントに何で遠征計画なんて立てれたんだ?……宿賃とか移動費とか嵩むだろ?」 部員全員が思い思いにはしゃぐ中、バレー部の菩薩とのあだ名をつけられる程に普段物静かな『黒田善幸』がそう呟いた。 遠征先にあたる山形県の某高校までのルートや経費を考えると、それ正しい疑問と言える。 「心配は無用だ。これを見てみな」 何事にも冷静な郡也は、羽目を外しすぎている他の部員を諌めつつ、ジャージのポケットから一枚の紙切れを取り出した。
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