始の巻【とある旅館の怪】

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【お一人様一泊1500円で夕食朝食つき、古い旅館ですが浴室などの設備は整っております!】 郡也が取り出した紙切れにはそのような内容が書かれていた。 彼は、たまには泊まりがけの練習試合をして部員たちの結束を高めようと、以前から遠征を計画していたらしい。 「ネットで山形にこの安さで泊まれる宿があると知ったときは、さすがの俺も驚いたぜ」 「おおー、すげぇ安さだ!……こりゃいいな」 「お、俺にもみせてくれよ!」 郡也の出した紙切れ、もといパンフレットのコピーは速攻で部員たちの手に渡り、今や揉みくちゃにされている。 「ちっ、煩い奴らだな……もう少し静かに騒げ」 「郡也……それ日本語間違ってるぞ」 今回のミーティングはもともと、15畳程度の部屋に30人が集まる形だった。 しかし、当然それでは広さが足らず、郡也と善幸は堪らずぎゅうぎゅう詰めの部室から脱出し、外のベンチに腰掛けた。
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