夢うつつ

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境兄弟(過去) ゴホッ、ゴホッゴホッ、 鈍く響く咳が痛々しい 窓の格子に寄り掛かる兄ちゃんの身体は、昔より細くなって それだけで涙が滲んだ 「具合はどう?」 「んー、別に普通だな。」 「お薬、ちゃんと飲んでる?」 「おー!あの池谷先生のお薬、 めちゃくちゃ苦いんだけどさ どうにかなんないのか、これ」 「良薬口に苦し、じゃない?」 「…うげー。」 口ではふざけた風を装うけど 笑う顔も、どこか苦し気で ゴホッ、ゴホッゴホッ、 鈍い咳は、聴覚を支配する 「ねえ、兄ちゃん…」 何処にも、いかないよね…? おれ一人置いて、いかないよね? ひとりは、こわいよ 「大丈夫だよ、まさよし」 何処にもいかないよ、 (撫でられた温もりに安堵した)
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