94人が本棚に入れています
本棚に追加
境兄弟(過去)
ゴホッ、ゴホッゴホッ、
鈍く響く咳が痛々しい
窓の格子に寄り掛かる兄ちゃんの身体は、昔より細くなって
それだけで涙が滲んだ
「具合はどう?」
「んー、別に普通だな。」
「お薬、ちゃんと飲んでる?」
「おー!あの池谷先生のお薬、
めちゃくちゃ苦いんだけどさ
どうにかなんないのか、これ」
「良薬口に苦し、じゃない?」
「…うげー。」
口ではふざけた風を装うけど
笑う顔も、どこか苦し気で
ゴホッ、ゴホッゴホッ、
鈍い咳は、聴覚を支配する
「ねえ、兄ちゃん…」
何処にも、いかないよね…?
おれ一人置いて、いかないよね?
ひとりは、こわいよ
「大丈夫だよ、まさよし」
何処にもいかないよ、
(撫でられた温もりに安堵した)
最初のコメントを投稿しよう!