夢うつつ

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畑中 (過去 あれもほしい、これもほしい! だってしんちゃんは王子だから! 昔母上から聞いたお話では 異国の偉い人の息子は 『王子様』って呼ばれているんだって! 「じゃあしんちゃんは王子だね!」 そう言ったら、母上はそうねって頭を撫でてくれた 眉目秀麗、天真爛漫、 それがこのしんちゃん! 「領主様のご子息よ、」 「相も変わらずお綺麗だ、」 「きゃあっ、畑中さまよっ」 街を歩けば、みんながしんちゃんの噂を囁く こうゆうの嫌いじゃないし、 むしろ嬉しいっ 「しんちゃんの手に入らないものなんて、この世にないよ」 そう思ってた それが続くと思ってた …君に出会うまでは… 「…えと、貴方だれですか?」 書物屋で君が言い放った一言 その一言にひどく動揺して、 しんちゃんはあれこれと話した 自分がこの国の領主の息子で、 みんなの噂の的で、 知らない人はいないんだと! でも彼は、 「へえ、存じませんでした」 そう言って、また書物に目を落とした (きみはいったいなにものだい!)
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