12人が本棚に入れています
本棚に追加
綺麗な顔をしていると思う。とても中学生になんて見えやしないぐらい大人びて。でもそれを言ったらコイツは、そんな綺麗な顔からは少しも想像できないあの陽気な喋り方で笑うんだろう。
(それって悪く言うたら老けとるってことちゃうんかい!)
とかって。
******
「おい、おした…り…」
テニス部の練習がオフの日を見計らったのか、赤点常習犯の宍戸にむけて補習があった。それに宍戸は嫌々ながら行く気になったのは、忍足が微笑んで《教室で待っといたるから》と言ってくれたからだ。
補習が終わって急いで教室に向かえば、珍しく居眠りをしている忍足がいて、宍戸は忍足を呼ぶ声を思わず抑えたのがつい今先ほどのこと。
「…珍しく寝てやがんの」
シンとした教室に自分の声だけが響いたことがなんだか恥ずかしく思えた。
忍足がこうして無防備な姿でいることはあまり無いから、宍戸もどうしたらいいのかわからないのだ。だけど、綺麗だな、と思う。触りたいな、とも思う。起きろ、でももう少し寝てろ、とも思いながら忍足を眺める宍戸の表情は酷く穏やかで、暖かい空気が流れている。
最初のコメントを投稿しよう!