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「…先生…?」
紗奈の声に看護師は、振り返った。
「…生徒さん?」
「どうなんですか?大丈夫なんですか?」
さっきから部屋中を鳴り響いている電子音が龍之介の頭元にある。
頭には包帯が巻かれ、龍之介は寝ているように見えた。
「大丈夫ですよ。まだ意識は戻ってませんが、命に別状はありません。」
「え…?」
紗奈は、弱々しく息を吐いた。
「…よかっ…た…」
「いい生徒さんをお持ちなのね。」
「え…?」
「若い先生なのに、きっと素敵な先生なのね。」
「…はい…」
先生って呼んだからか…
「何かあったら呼んでね。」
紗奈は小さく頷き、彼女を見送った。
痛々しい龍之介を見ると、泣きそうになった。
点滴をしている龍之介の手に紗奈は触れた。
「…っ…ズッ…」
温かい…
良かった…
握り替えしてこない龍之介の手を両手で包んだ。
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