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「三十三番と四十六番の人いませんか~?」
呼び掛けながら暫く歩いていると――。
「三十四番、ですか?」
声を掛けてきたのは、塗り潰したような黒い髪と瞳をした、黄球人の少年だった。キモノの袖を短くしたような形状の武道着を身に纏い、大陸式とは異なる剣――カタナと呼ばれる武器を、腰から下げている。
そして、黄球人は総じて若く見えるもの。この試験を受けているという事は、彼もアクアと同じ年齢のはずだが、まだかなりあどけなく見えた。
「ああ、オレがそうだけど」
「三十三番です。よろしくお願いしますね」
言葉遣いからしてなんだか朴念仁っぽい黄球人少年。苦手な部類かもしれないが、今は自己紹介が先だ。
「オレ、エレスリア校のアクア・ラマンカリアっていうんだ。あんたは?」
「黄球第一士官学校の絖濂青<コウ レンセイ>です」
「えっと……、黄球人って苗字が先なんだっけ?」
「はい。絖が苗字で、濂青が名前です」
「レン、セイ……、」
黄球人の名前は難しい。ただでさえ語順が聞き慣れないだけでなく、発音も大陸と違うから。とはいえ、とりあえず呼び方を決めなければ始まらない。
「……長いな。レンでいいか?」
「え、あー、まぁいいですけど」
「よし、決まりだな! じゃあレン、悪いんだけど四十六番の人も探しててよ……」
こんな流れで、濂青にはスピカのパートナー探しも手伝って貰う事に。すると四十六番の受験生は、彼と同じ学校の黄球人女子学生だったことがすぐに判った。残念ながらイケメンとは当たらなかったが、スピカはほっとしている様子。
アクアの心配のタネが、人知れず取り除かれた。
やがて広場には男子どうしの組、女子どうしの組、あるいは男女の組と、様々なタッグが出来上がった。全ての受験生が組になったことが確認できたところで、ネリアから次の説明が与えられる。
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