第一章:登用試験

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「では皆さん、この後に行われる実技試験では、パートナーと協力して、こちらが手配した敵と戦って頂きます。 そこで今から三十分間、作戦を練る時間を設けます。本番は番号順に行います。待ち時間の間、奇数番の受験生と偶数番の受験生は、別の場所で待機となります。それから先の流れについては、後ほど説明します」  つまり、この作戦会議の間にパートナーの得意不得意を見極め、本番に備えろということだ。  濂青という黄球人の実力がいか程か、限られた時間でしっかり聞き出さなければ。 「では、三十分間です。作戦会議、始め!」  早速がやがやと話し出した他の受験生に負けじと、アクアもすぐに口火を切る。 「よし、とにかく始めようぜ」 「そうですね。えっと確かアクアさん、でしたね」 「アクアでいいよ、面倒臭いから」  さっと挨拶を終えた後、まずは基本的な情報を共有し合った。  優属性は、不運にもどちらも同じ、水。なぜ不運かといえば、他属性の使い手の方が持ち玉が多くなって良いからだ。 「……という事は、使える魔術が限られてくるな」 「一応、支援系魔術なら一部、他属性のものも覚えていますが、効果に自信がある程ではありません」 「わかった。とりあえず基本は水属性の術で攻めるにして、他属性のを使うかどうかは、任せる」  更に、武器の方も剣の一種という点では被っている。  エレスリアにはカタナ使いは少なく、実際どのような具合かはよく分かっていなかったから、アクアは試しに貸して貰って持ってみた。さほど重くなく、女性でも難無く扱えそうだ。濂青いわく、これは小さい方だということだが。  見た目からしても、力押しで闘うタイプではなさそう。おそらくは、小技の方が得意なんだろう。――と、ある程度パートナーの分析をしたところで、アクアは礼を述べて鞘に入ったままのカタナを返した。
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