566人が本棚に入れています
本棚に追加
----
いよいよ、実技試験が始まろうとしていた。
案内された待機所は、普段は屋内型訓練施設として使われているらしく、壁には弓や木刀、金属製の兜や鎧が掛けられている。
窓の外には、遥か遠くまで続く森林。この辺り一帯が全部訓練施設である事を知り、アクアもその広さに心底驚いた。
今いるこの待機所には、クジの番号が偶数の受験生のみが集まっている。少し離れた所に待機所がもう一つあり、そちらにはスピカや濂青も含め、奇数番号を引いた受験生がいるはずだ。
こうして奇数番の人と偶数番の人を分けることで、パートナーとの作戦会議の時間を厳密に三十分に制限しているわけだ。
やがて紺の軍服を着た男性試験官が、丁寧に淡々と説明を始める。
「では皆さん、この先にある森林型訓練施設で、実技試験を行います。敵の組合せ等は全て協会の判断で決定します。全員が同じ組合せに当たるとは限りません。
各戦闘の通過判定は、コース上にいる試験官が行いますので、指示に従ってください。続行不可能と判断した時には、強制介入する事もあります。
コースの途中にある折り返し地点に着いたら、引き返してください。入口へ戻ってきたら、試験終了です。何か質問はありますか?」
こういう時って絶対質問する奴いねぇよな~と思っていると、案の定。手を挙げる受験生は見当たらず、周りにちらちら視線を送ったり、下を向いて武器をいじったりしている者ばかり。
「では、質問は無いようなので、調整が出来次第、始めたいと思います」
試験官は森林側の扉を開け、左方向にあるもう一つの待機所に向けて手で合図をした後、室内に戻ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!