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まだ日の高い時刻だったが、曇り空のせいか深緑の林は薄暗く、風がザワザワと枝葉を揺らしている。
他の試験エリアとは結界で隔離されているからか、あまり物音が聞こえてこない。風が生温いこともあり、ともすればこの世のものでないものが出てきそうな雰囲気だった。
目を凝らしつつ周囲の気配に神経を尖らせるアクアだったが、静かすぎると気味が悪いので、とりあえず適当に喋り出す。
「暗いな……」
「暗い、ですね……」
「まだかな、一戦目」
「そろそろじゃ、ないですかね」
「……」
「……」
相方が無口な黄球人では会話が長続きするわけもなく、仕方なく喋り続けるのを諦めようとしたその時だ。
十五メートルほど先の茂みの左右からガサガサと音がし、黄球式の武装をした二人の軍人が姿を現した。左から現れた軍人はカタナを、右から現れた軍人は槍を持っている。
その格好はまさしく、黄球の武人「サムライ」であった。
大陸では強固な金属で作られたサムライ武具は高価で、一般人の手には中々入らない。マニアな貴族はそんなレア武具を趣味で買い集めているんだとか。
異国情緒溢れる装いに妙にテンションが上がり、わ~高そう、わ~珍しい、などと呑気な事を考えていると、次の瞬間。
「第一戦、始め!」
どこに潜んでいたのやら、試験官が戦闘開始の掛け声を発した。
噂をすればとはよく言ったもの。どうやら本当に初戦らしいので、アクアは慌てて剣を引き抜き、即座に頭を戦闘モードに切り替える。
(リーチの長い槍が厄介だな。上手く懐に入れれば……)
声のボリュームを落としてパートナーに囁く。
「レン、あっちの槍使い足止めできるか」
「やってみます」
「頼むぜ」
濂青がアクアの右斜め前方に位置取ると、二人の軍人が駆け足でこちらに向かってきた。距離が徐々に近くなる。
濂青が片方を足止めする間、アクアはもう片方を攻める作戦。
二対ニなのだから充分理に適っているはず――と、構えて待つ。
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