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ところが、数メートル手前でカタナ使いと槍使いは交差するように移動。位置を逆にしてきた。いきなり算段が狂う。
長い槍が目の前に突き出され、アクアはざぁっと靴の裏を土に擦りながら後ずさった。
「ちっ……」
見上げると上から次の斬撃が来る。
「水鏡<ミズカガミ>っ!」
立ち上がりざまに剣を一振りして衝撃波を放ち、その場を逃れる。
一方の濂青も、そのままカタナ使いと対峙する形になってしまった。足止めするはずだった槍使いに気を取られてよそ見をすれば、自由にしたカタナ使いに隙を突かれる危険があった。
「すみません、予定が」
「いい、このまま行くぜっ」
必要最小限の会話の後、アクアと濂青はそれぞれ目の前の相手に集中することにした。
槍の使い手といえば義兄のキルセスがいるため、敵に回すと厄介な相手なのはアクアもよく解っていた。重量感のある槍を扱えるほどの腕力がある相手。力勝負では押し負けるのは目に見えている。
アクアは槍使いと睨み合いながら、左手を上方にかざした。その先で魔法陣が広がる。
「アイシクル・レイン!」
得意な水属性の術。魔法陣から発生した無数の氷柱が地面に突き刺さり、槍使いを後方に退避させる。
それを見て術を解除し、今度は一気に距離を詰める。
「ふっ!」
両手で構えたサーベルで素早く斬りかかったが、ガシッと乾いた音が響き渡った。防がれた。
チャンスを活かしきれなかったことにしかめっ面をし、一度後退。そこへ、濂青もちょうどカタナ使いと距離を取り、アクアの隣に立った。
「レン、そっちはどうだ?」
「まあまあですね」
これで濂青が一人でカタナ使いを戦線離脱させてしまうような力の持ち主だったら、アクアにしてみれば楽だったが。どうやら可もなく不可もなく、ずば抜けて力があるわけでも極端に劣っているわけでもない、といった具合だ。
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