第一章:登用試験

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---- 「試験監督、受験生を保護しました。男子学生が負傷していましたが、応急処置は済んでいます」  傭兵の男性がそう呼び掛けた林の出口には、赤い軍服を着た試験監督ネリア・ダイアグラスの姿があった。 「ご協力感謝します」  彼女はそう答えると、束ねた青い髪を揺らしながら、心配そうな面持ちで、真っ先に負傷した濂青の元に駆け寄る。 「絖濂青くんね、怪我は大丈夫?」 「はい、治癒の術を受けたので、もう平気です」 「ごめんなさいね。私が魔獣の侵入にもっと早く気づいていれば……」  ネリアが次に見遣るは、かつて自らの息子とよく遊んでいた少女。 「アクアちゃんよね?」 「あ、はい。お久しぶりです」 「あなたにも大変な思いをさせてしまったわね……」  本来ならば喜ぶべき再会が、このような形になってしまったのを悔やんだ彼女の声は、暗く沈んでいた。 「……いえ、大丈夫です」  アクアも咄嗟にはそれしか返す言葉が見つからなかったが、少しの沈黙の後、そういえば試験はどうなるんだろうという疑問を思い出し、事務的に尋ねる。 「実技試験の方は、やり直しになったりとかしませんか?」  それを聞いたネリアが試験監督の顔に戻るのには数秒かかった。されど姿勢を正し、本来のはきはきとした声音で答えを返す。 「ああ、そうだったわ……説明しなきゃね。二回の戦闘は正常に行われたと係の者から聞いているから大丈夫。それを元に、ちゃんと判定されるわ」 「そうですか、良かった……」  ようやく場の雰囲気が和んだ時、二人の受験生を助けた傭兵は。 「それでは、私は別の任務に就きますので、これで失礼します」  一礼して数歩離れ、「またよろしくお願いします」というネリアの言葉を聞くと、背を向けて去っていった。
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