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『それを発動すると、いくら私の魂を継ぐお主でも止まってしまうからな。』
「どういう意味だ?」
『いずれ分かる。
それより、早く契約に移るとしようか。どうやら機械兵士たちが近づいているらしい。』
「分かった。」
青年は頷くと扉から少し離れ、真正面に立った。
『我が魂を宿す者よ、我が身体を通ることを望むか?』
「ああ。」
青年は扉をしっかりと見据えながら頷いた。
少し離れたところから駆動音が聞こえる。機械兵士たちが到着するのもそう長くはないようだ。
『汝、世界を守ることを望むか?』
「・・・・・・ああ。」
一瞬迷いながらも彼は頷いた。
偽善でも構わない。
それで救われる人がいるなら。
俺のようなヒトがこれ以上出ないのなら。
『汝、その名を述べよ。』
「俺の名は、ダルク。
ダルク=クラシオン。」
名を名乗ると同時に、その巨大な門が開き始めた。
そこへ何十という機械兵士たちがなだれ込んでくる。
機械兵士たちは射撃体勢に入るが、撃たない、いや撃てない。彼らにそうさせない何かがその扉にはあった。
『ダルク、』
それに気にもかけず扉の中へ踏み出していくダルクに上から声がかかった。
『今は分からなくていい、ただ忘れるな。
お主の中には『無』に抗う力があることを。忘れないでくれ。』
ダルクはその言葉に、扉を見たことのない父親と重ねていた。
『さあ行け、ダルクよ。
世界がお前を待っている。』
「ああ。行ってくるよ。」
彼は一度も振り返らず、明るい光に満ちた扉の中へと消えていった。
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