プロローグ

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 それから数十分。  青年を乗せていたバイクは、先ほど高台から見た街の入り口で止まっていた。  青年は街の中へ踏み込むが、そこはなにやら異様な静けさに満ちていた。  この街で最も大きいであろう通りを歩いているにも関わらず、何も動いているものが見当たらない。  ただそこにあるのは、しおれた果物を乗せた屋台と、それを見張っている等身大の人形だけだった。 「ここもか・・・・・・」  初めて聞く青年の声は、まだ20にも満たないであろう容姿とは違い、何か重さが感じられた。  青年は首を巡らせながらゆっくり歩き出し、近くに置かれている人形の前で立ち止まった。  何かを書いた紙を手に持つ女性の人形。とても精巧なそれに手を伸ばし、青年はゆっくりとその肩を掴んだ。  人形特有の鉄のような感触がその手に伝わる、ハズだった。 「・・・・・・やはりか。」  だが、その手から伝わってきたのは、生物のみが持ちうる柔らかさだった。  そう、その人形は紛れもない人間だったのだ。  青年はもう一度辺りを見渡した。  店の中で客を呼び込む中年の男、  通りを駆け回る少年、  飼い主に連れられている犬、  青年を除いた全てが止まっていた。 「何が起こっている・・・・・・」  青年は彼が元々住んでいた村を合わせ、すでに5つの街で同じ現象が起きているのを見てきた。  だが、原因が分からない。  道中にかなりの蔵書数を誇る図書館を幾つか見てきたが、全く記述がなかった。  だが、青年にはただ一つだけ、宛があった。  それは今も顔を覗かせている、この現象と同時に現れた、巨大な門。これこそが全ての原因、彼はそう考えていた。  それから放たれる何か禍禍(まがまが)しい気配。それもまた、その予想をより確信に近いものに変えていた。  ここにもう用はない、と判断した青年は元来た道を引き返した。
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