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青年が使ったものも、まさしくこれだった。
その青年の魔術によって支えを無くした機械兵士は、バランスを崩し、そのまま前のめりに倒れていく。
その間に青年は疾走。銃をある一点に構え、放った。
その先にあるのは、対魔術の刻印術式。
あらゆる魔術を無効化する、魔科学において最高傑作とも言うべき術式。
それに向けて、黒く輝きだした漆黒の獣が吼えた。
バオン、という先ほどよりも大きな銃声と共に機械兵士の右肩が刻印共々穿(うが)たれ、右腕が切り離される。
続けざまに放たれた弾丸はその左肩を喰いちぎり、腕をもぎ取った。
『ガ、ガ、ハソンリツ40%、キケンイキニトツニュウ』
落下を続けるそれに向けて、青年はもう一発放った。
その銃弾は大気を切り裂き、赤い球体(コア)に突き刺さる。
『キケン、キケ、ン』
弾丸はそのまま回転を続け、遂にはその巨体を貫いた。
『コノオトコ、キケ、ン・・・・・・』
風穴を開けた機械兵士は沈黙し、地に落ちた。
それに青年は、すぐさまその下に術式を展開。その黒色の術式が広がる。
それが完了すると同時に、辺りに爆発音が轟いた。
だが、辺りにまき散らされたのは爆発音だけだった。
その異常に驚きもせず、青年はただ平然とその爆発の方へと歩いていく。
その時には既に機械兵士の本体は吹き飛んでいたが、まだその下敷きにされていた人々は残っていた。
そこに横たわっていたのは3人、男性と女性と少年が1人ずつ。
だが、そのどれもがもう助からないことは明らかだった。
腕を始め、足、腰、首、それらが全て潰れ、曲がってはいけない方向に曲がっていたのだ。
青年はその惨劇を何をするでもなくただジッと見ていた。
もし自分が止まっていたら、こうなっていたのかもしれない。
これまでの旅で何度も遭遇した出来事。
今回もまた同じ様に、同じ思考を巡らした。
全ての動物の時が止まった中、なぜ自分は動けるのか、なぜ自分なのか、なぜ自分だけなのか。
考えても考えても分からない。
だからこそ、その不安はより一層大きなものとなる。
普通の人間なら、この状況に精神が壊れてもおかしくはなかった。
だが彼はそうはならない。
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