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青年が駆ける何もない荒野は闇に包まれ始めていた。
街を出てから三日が経った。
ゴーグルを付けたまま、岩山の陰へ沈んでいく太陽へ顔を向けた。
何も、植物すらない荒野の夜は冷える。
だが青年はそのまま走行を続けた。
特に理由はない。
ただ彼には止まる必要がなかったのだ。
機械兵士達に見つかるのを恐れ、明かりすらつけずに暗闇に呑まれた荒れた道を駆けていく。
すると、彼を乗せたバイクは今までと違う、岩壁に挟まれた狭い道にさしかかった。
両脇の壁は上に行くほど反り返り、まるで牢獄にいるような気分にさせる。
その不気味さに自然とバイクのスピードが上がっていく。
人二人ぐらいしか通れないその小道は、それほど長くはないようで、ものの数分で抜け出ていた。
視界が開けたところで、青年はスピードを緩めていく。
歩くような速さまで落としてから彼はブレーキをかけた。
そこで初めて青年はゴーグルを取り外し、上を見上げた。
そこにあったのは、あの扉だった。
遠くからでも見えることから巨大なことは分かっていたが、いざそれを間近で見てみるとそれは常軌を逸していた。
横幅はおよそ200メートル、高さは、あまりの大きさにその頂上が全く見えない。
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