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彼はバイクをゆっくりと降りると、いつものようにそれを立て、乱れた髪を撫でつけながらそれに向かって歩き出した。
その扉は世界の最果て、底の見えない崖の際にあった。
歩き続ける青年の両手には自然と例の銃が握られていた。
彼は立ち止まり、無意識の内に引き抜いていたそれを顔の前まで持ち上げた。
この国で最も優れた武器職人に一年かけて造らせた特注品、魔銃『ガルド』と『アグニ』
通常の弾丸に加え、自分の魔力で強化、あるいは生み出した弾丸を放てる、この世にこの2つしかない至高の品。
それをしっかりと握り締めてから、青年は扉の前に立った。
その扉は間近で見てみると、かなり年期のいったものだと分かった。
見たこともない金属に、所々に恐らく古代のものであろう文字が刻まれており、一種の神々しさすら感じられる。
青年はおもむろに銃を持ったその手を扉に当てた。
「読める・・・・・・」
目に映る古代文字、その一つ一つが目に入ると同時に脳内で翻訳されているような感覚だった。
「『我は世界の均衡を護るもの。
汝に我を通る覚悟はあるか?』」
青年は左の銃をしまい、開いた手でその字をなぞった。
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