ロクデナ屍

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また殴られた。 痛くて泣いた。 涙が頬を伝う前に。 またもう一発。 打撃を喰らうたびに。 母さんを思い出す。 母さんも殴られていたことを思い出す。 父さんは。 家の悪魔だった。 僕の目の前で。 殴りながら、母さんを犯し。 罵りながら。 ある日突然、首を絞め。 父さんは、母さんを。 そして。 今目の前にいる、 新たな悪魔。 この義理母が。 僕を殴り、心身ともに痛め付ける。 この家の悪魔。 義理母は。 僕を殴るようになる前に。 悪魔を手にかけていた。 悪魔同士の闘い。 いつものように酔っ払って義理母を殴り、殴り疲れ、眠った父さんの頭を。 ゴルフクラブで何度も。何度も。 脳しょう撒き散らすまで。 血液の。飛沫が顔にかかるまで。 ねえ。 人の血は、深紅でも、赤黒でもなく。鮮明な赤なの。 庭にいる父さんの死体。 眼球が飛び出てた、父さんの遺体。 悲しみの涙がでるよりも先に。 この家の悪魔がいなくなり。 僕はこれからどうなるのだろうと。 新たな悪魔を背に。 呆然とただ、立ち尽くしていたんだ。 殴られる度に蘇る、鮮明な記憶。 禁断の悪夢。 鼻がひしゃげて潰れて血塗れの顔。 僕はいつ、ああなるのだろう。 殴られて、吹っ飛ぶ。 遅れて、床に叩きつけられた衝撃。 痛み。傷み。 助けて。 悲鳴はきょうも、 ちゃんと聞こえない―。
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