乙女の花園

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「ここが生徒会室ですよ」  昼休み、アリシアが生徒会室に連れていってくれるというので、お言葉に甘え、案内してもらった。  やっぱ純朴培養の令嬢の園。  廊下で顔を合わすたびに「ごきげんよう」だもんなぁ。  つーか、みんな、俺が女装だってなぜ気づかない!?  任務としては成功しているが、男として悲しいです。 「入りますね」  アリシアは俺の懊悩などしるはずもなく、生徒会室のドアを開け、中に入った。  俺がなかに入るとしっかりとドアを閉め、鍵をかける。 「アリシア様。誰ですのこちらの方は?」  背の小さい、髪をピンクのリボンで二つに分けた少女は、鈴を転がしたような声で訊ねる。 「こちらは今日編入してきた天野さんよ。今朝理事長が蓮さんと茜さんにも話していたでしょう?」  アリシアはツカツカと社長室にあるような仕事用デスクにかけて説明する。  あれ? なんか雰囲気変わった?  殺気や顔色の変化を機敏に察知できる訓練を受けているので、急な変化にはめざとい。 「ふ~ん。この子が新しい生徒会役員か~」  もう一人いた気の強そうな赤髪の少女がため息混じりにこちらを見た。  う……露骨に嫌そう。  しかも、三人揃ってこっちを品定めするように観察してるし……。 「な~んだ。おじいちゃんが今朝話した編入生か~」  蓮は大きく息をはいて、肩をぐりぐり回し始めた。  さっきの鈴を転がしたような声はどうした!? 「人手不足だからしょうがなく引き受けたけど……」  アリシアはじーっとこちらを観る。  なんだその忌々しげな視線はーっ!? 「どうみても普通の子ね」 「なにか事情があるわけでもなさそうだけどなー」  茜もつまらないものを見る目でこちらを見ていた。  てゆーか、あんたらさっきと態度違いすぎだろ!  どんだけ分厚い猫かぶってんだ!? 「いいこと、私たちはあなたのお守りをするほど暇じゃないの!」  キッとこちらを見据えて言い放つアリシア。  お守りするのはこっちだっての!  色々と突っ込みたいのを我慢して、三人の少女の言葉を聞き流す。 「あ、あのー。私は書記をすればいいんですか?」  とにかくこの三人の俺からの話題をそらさねば。 「何を言っているの? あなたの役目は雑用。そう、あなたは今日から、私たちの犬よ!」  いきなり宣告されてしまった。
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