乙女の花園

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「い、いぬ~~!?」  いきなり犬宣言ですか!?  突拍子な発言に麗信は素っ頓狂な声をあげた。 「やった~! 奴隷誕生だ!」  蓮は顔を綻ばせて喜んでいる。  しかし、ガーディアン→女装→犬→奴隷って……。  今日だけで何ランク落ちてんだ俺……。  もう落ちそうにないテンションがさらに一段沈み込んだ気がする。 「じゃあ、レイ。さっそくだけど生徒会室の掃除よろしく」  がっくり肩を落とす麗信に茜は箒を差し出した。  俺は反射的に箒を受け取る。 「あの……レイって?」 「麗信のあだ名」 「あら、いいじゃない。犬っぽくて」  アリシアが微笑みながら口を挟んだ。  思考回路がおかしいのか? 彼女達は……。 「じゃあ、レイ。掃除よろしくね。手を抜いたりすれば私のブラックキャットが火を吹くわよ」  アリシアは机から乗馬用鞭を取り出して妖しい笑みを浮かべた。  どうやら、ブラックキャットと言うのがあの鞭の愛称らしい。  ――て、ちょっと待て!  なんでそんなものがこの教室にある!? 「人の趣味をとやかく言わないことよ。レイだって許されるならやりたいことの一つや二つあるでしょう?」  いや、初対面の相手を犬や奴隷扱いするのは普通に許されないから……。  突っ込みたいのを無理矢理抑えながら箒を動かした。  その様子に満足したのか、アリシアは優雅な仕草で髪をなびかせながら部屋をあとにした。  悪魔だ。あの三人はけがれなき花園に咲く毒花に違いない。  女子なんて、やっぱり悪魔ですわ!  麗信の頭に女=悪魔の方程式が追加された。  麗信は心のなかで毒つきながら、黙々と仕事をこなす。  窓と机を拭き、部屋の埃を掃き、花瓶の水を変える頃には、予鈴が鳴り響いていた。 「やっべ!」  麗信はあわてて三年の教室に走っていった。
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