エピローグ

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「よ! おつかれさん!」  本部に戻ると軽いノリで挨拶してくる俺の兄貴。  名前は自称、伊吹王我。  時にはジョナサン・キング。  時には金正陣。  もう三十歳を越えているが、実年齢不明、国籍不明、本名不明と謎が多い。  わかっているのは、俺が六歳の時に戦場で兄貴と会い、俺は弟として各地を回る兄貴につれ回されたこと。  傭兵稼業を引退し、警備会社につとめだしたことくらいだ。  もう十年になるな……。  ちなみに性格はひねくれている。  さっきも警備で気絶したことを散々いびられた。  しかし、俺の上司にあたり部下からは慕われている。 「あら、麗信。おかえり!」  先輩の未羽さんが何やら大きなカバンをもって入ってきた。  後ろには熊とみまごう体格の康志さんまでいる。 「麗信。さっそくだが、次の仕事に入ってもらう」  兄貴はゴホンと咳払いをした。  何か嫌な予感がする。  兄貴がもったいつける時はろくなことがない。 「これはお前にしかできない任務なので拒否権はない」  しかも、内容言う前に拒否権云々か!?  どんな仕事をやらせる気だ!?  アマゾンでのアナコンダ捕獲員の警護? 今会社が警備している要人の敵対組織の掃討? 内戦地区のジャーナリストの警護? いやいや、それは温いくらいか……それじゃあ、いったい!?  思案を巡らす麗信の前に一枚のクリップボードがおかれた。  すばらしく綺麗な美少女の写真と、プロフィールだ。 「今回は女学院で彼女の警護をしてもらう」  なんだ女学院で警護。  簡単じゃ――ん? 「今、『女』学院って言ったか?」  俺の問いの答えは兄貴の笑顔が物語っている。  ガッシィ!  へ?  席を立とうとした矢先、康志の剛腕が俺を捕らえた。  未羽もノリノリでカバンから変装グッズやら化粧品やらだしてるし! 「すぐ終わるから」 「これも任務のためよ」  悪ノリする二人はランランと目を輝かせ、こちらをみいた。 「うっ……わぁぁぁぁぁ!」  三十分後――。  女装させられた麗信は恥ずかしさのあまり、本部から逃げるように仕事場である『聖華女学院』へ向かった。
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