乙女の花園

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「私は今年から保健医になった佐藤美代子よ。美代子先生って呼んでね」  案内がてら自己紹介する美代子。 「わ、わたしは天野麗信です」  兄貴に下の名前なら偽名にしなくていいと言われた。  理由は十分女っぽい名前だから……って兄貴がつけたんだろうが!?  まったく嬉しくないところで役に立ってしまったな。  一人心のなかで文句を言う麗信。  しっかし、さすが日本最高の令嬢が通う学校。  でかい。  正門から学舎まで、歩いて十分はかかる。  しかも、途中に女子寮があり、教会があり、サロンやカフェテリアに似た食堂まである。 「着きましたよ」 「あ、ありがとうごさいます」  美代子に案内されてついた学舎は、六階建てで中も恐ろしく広かった。  正方形につながった廊下だが、一つの廊下に階段が五つあり、教室が十五個くらいあったはず……。  しかもエレベーターまであるし……。  あまりの凄さに呆気にとられていた麗信は、立ち止まっていた美代子にまともにぶつかってしまった。  なんだこの柔い物体は?  モニュ、モニュ。  顔をあげた麗信はすんでのところで悲鳴を飲み込んだ。 「ご、ご、ごめんなさい!」  先生の胸に当たってしまっていた。  てゆーか、揉んじゃったよ!  やばい、頭がフリーズしそうだ。  凍り付く麗信に対し、美代子は驚いた様子もなく、 「まぁ、まぁ。気になる年ごろよね~。先生ならいつでも相談に乗るからね」  軽い調子で美代子は笑った。  あぁ、そう言えば今、俺ってみため女の子だっけ……。  女子同士だと胸を触るくらい当たり前なのか?  理解できない世界だ。 「じゃあ、先生は外にいるから、頑張ってね!」  美代子はウインクして、理事長室の扉をあけた。  麗信は促されるまま理事長室へ入っていく。
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