白マント

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 夕飯の買い出しにきた主婦たちで、今日もいつものように賑わいあっている、とある商店街。その道をひとつ逸れると、大通りとは全く世界観の違う闇に包まれた不気味な裏路地が、どの町にもあるようにここにもある。  ただ、白いマントを身に纏い、すっぽりとフードを被った長身の彼が、この裏路地と同じようにどの町にも存在するかといえば、その答えは否である。  白マントの男は、まるでファンタジー映画に出てくるような、自身の丈よりも長い杖を持っている。妙なのはそればかりでない。彼の傍らには、がっしりとした西洋風の大きな扉が一枚、どの建物に繋がっているわけでもなく、無造作にただ置かれていた。  すると彼のもとへ、どこからか現れた二人の女子高生が、少し興奮気味に近寄ってきた。 「一万円で何でも願いを叶えてくれるって、ほんと?」  一人の女子高生は、まるで敬語を知らないかのよう──本当に知らないのかもしれない──に白マントの男へ向けて言葉を放った。しかし白マントの男は、そんなことは微塵も気にしない様子で、「ええ」と静かに頷いた。 「でも、なんだかちょっと危なそうじゃない?」  もう一人の女子高生が、友達に耳打ちする。しかし彼女たちにそうさせてしまうのは、白マントの男が怪しいからにほかならない。 「危険ですか?」  彼女らは無垢な瞳で白マントを見上げた。白マントはフードに隠れて見えなかったその瞳を、初めて彼女らに向けた。 「いえ、とんでもない。危険なことなんて何一つ、これっぽっちもないですよ」  そう言って、白マントの男は優しく微笑んだ。
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