2人が本棚に入れています
本棚に追加
黒、というよりは灰色の翼を持った青年の天使。
赤い髪を風になびかせ、発光する空を憂いが籠った金の瞳でぼんやりと見つめながら、繁っている木の根元にもたれ掛かっている。
ユダ・アリエステル。
彼はこの世界でたった一人の異物だった。
何をしたわけでもない、ただ、翼が灰色というだけで。
そして天使はこの世界を、地上を創った神に造られ、神に名付けられる。
彼に与えられた名は『ユダ』。
かつて絶対である神を裏切り、殺そうとした唯一の天使の名前を、そのままつけられた。
生まれついての裏切り者、という意味を込められて。
突然、ユダの身体が跳ね起きた。
「時間…忘れてた。やっべぇ…」
あくびをしながらゆっくりと歩き出す。
最初のコメントを投稿しよう!