一話目 『異』

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黒、というよりは灰色の翼を持った青年の天使。 赤い髪を風になびかせ、発光する空を憂いが籠った金の瞳でぼんやりと見つめながら、繁っている木の根元にもたれ掛かっている。 ユダ・アリエステル。 彼はこの世界でたった一人の異物だった。 何をしたわけでもない、ただ、翼が灰色というだけで。 そして天使はこの世界を、地上を創った神に造られ、神に名付けられる。 彼に与えられた名は『ユダ』。 かつて絶対である神を裏切り、殺そうとした唯一の天使の名前を、そのままつけられた。 生まれついての裏切り者、という意味を込められて。 突然、ユダの身体が跳ね起きた。 「時間…忘れてた。やっべぇ…」 あくびをしながらゆっくりと歩き出す。
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